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未来を築く、健康経営―深化版:これからの健康経営の考え方について―

NPO法人健康経営研究会の「未来を築く、健康経営―深化版:これからの健康経営の考え方について―」(令和3年7月)からご紹介します。

健康経営とは、「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康を経営的視点から考え、戦略的に実践すること意味しています。

今後は、「人という資源を資本化し、企業が成長することで、社会の発展に寄与すること」が、これからの企業経営にとってますます重要になっていくものと考えられます。

​(2021年 NPO法人健康経営研究会 https://kenkokeiei.jp/whats

【経営者の倫理観に基づく経営戦略】

「健康」は、どの時代でも大切な普遍的なゴールの一つであり、経営者の誰ものが、従業員が「健康」であることに、異論を唱えることはありません。しかし、健康経営は健康づくりそのものがゴールであるように誤解されていることがあります。

健康経営は、経営者が「健康」に「経営」がついて始めて言葉として成立します。戦略視点では、この「経営」の視点を大切に考えていかなくてはなりません。健康経営は、経営者が自社の特徴を活かし、「人の健康」と「企業の健康」、「社会の健康」という3つの健康を戦略的に組み立てることが求めれます。

新たな企業変革を起こすための価値創造や競争力の源泉を、人の知識、創造力、経験、信念だとするのであれば、人は資源ではなく、資本として捉え直す必要があります。健康経営は、一人ひとりが「無形資産」として持つ、 未活用の知恵や異なる知識を経営の力で引き出し、企業の付加価値に変えるための戦略であると考えることがで きます。

【労働安全衛生(健康管理):労働法令の遵守】

健康経営における労働安全衛生(健康管理)とは、「日々の仕事を終え、無事に帰る」という、当たり前の幸せのために、安全・安心な職場づくりと心身の健康づくりに取り組むことです。労働基準法や、労働安全衛生法等の労働法を遵守することは、従業員の健康を守るための基本的な取り組みの判断基準となります。

しかし法律は、公権力をもって定めた最低基準に過ぎず、法令を遵守することだけでは、真に従業員の健康と安全を守ることはできません。

【心と身体の健康づくり:ヘルスリテラシー】

企業が従業員の健康づくりに注力すれば、「業績の向上」につながります。なぜなら、従業員の健康は生産性に直結しているからです。心身に不調を感じていると、仕事に集中することはできません。健康状態が悪ければ、当然、出勤状況や仕事の成果も悪くなります。

疾病や体調不良が原因で、アブセンティーズム(病気による欠勤)となったり、出勤しているにもかかわらず、能力や・スキルを発揮できないプレゼンティーイズム(疾病就業)になったり、満足のいく成果を出すことができず、労働生産性が低下したりすることもあります。

ヘルスリテラシーとは、「自らの力で健康を決める力」と捉えることができます。

従業員が入社時の健康状態を在職中はもちろん、退職時にも維持増進していくために、定期健康診断の受診やストレスチェックの受検等を通じて健康状態の変化に気づき、生活習慣の改善等を通じて、変化に対処していく力を育成することを支援することが必要です。

【働きやすさ:コンフォート&コミュニケーション】

健康経営で心と身体が健康体になることだけにとどまらず、人を資本にするという視点で企業戦略を考えることが必要となります。その戦略視点が、「居心地よく働ける『場』をつくること」と、「コミュニケーションを活性化させる『場』をつくること」です。

人を資本にするということは、心と身体が健康であることを土台として、従業員ひとり一人がもつ可能性を引き出すための投資と考えることができます。

健康経営戦略が、各企業によって異なるのは、その企業が定義する市場の中で目指すゴールの違いとともに、居心地とコミュニケーションを、それぞれの企業の特性にあったものに選択しないと効果がでないからです。

【働きがい:ワーク・エンゲージメント】

「働きがい」とは、自分に合った仕事に積極的に取り組むことができることで、自分自身の価値を、仕事を通じて見出すことでもあります。日々の定型業務から始まり、その積み重ねによっていろいろな職務の連携が理解できるようになります。そのことで仕事そのものの広さ、深さが理解でき、すべてが色々な糸で結ばれていることに気づくようになると、今まで無関心であったことについても深い関心と興味を持てるようになり、結果として、仕事の中に面白さを感じ取ることができるようになると考えています。

「働きがい」を高めるためには、企業と従業員の間に信頼関係が必要となります。信頼関係を築いてくためには、心理的安全性を土台として、企業が目指す「ありたい姿」と、従業員が目指す「ありたい姿」が、同じベクトル(方向)を向いていることが必要です。ベクトルを一致させるためには、経営者が経営戦略として、自社の進路を積極的に示すことが、何よりも大切です。その上で、従業員がこの企業で働くことで得られる経験やスキル(技能)が、自分の価値向上につながることを実感することができてこそ、従業員は、持続的な働きがいを持ちながら、持てる能力を発揮することができるようになります。

このような「企業と従業員による価値共創」を行うためには、企業は、従業員に対して、法令遵守を前提とする健全な就労状態、コンフォートとコミュニケーションを軸とする、生産性高く柔軟に働ける職場環境の整備、そして従業員が共感できる仕事のテーマづくりに、積極的に投資することが求められます。


働くことで健康を損なう原因には、職務に対する関心のなさ、過大な責任、上司や同僚とのコミュニケーション不足、ワークリテラシーの欠如(知識、経験、資格の不足)など、多くの要因が考えられます。さらに、これらの欠如によって、不安障害、適応障害、抑うつ状態など、心身の不調は悪化します。仕事が思うようにできなくなることで、職場にいることすら辛くなります。本来、毎日、今日も元気に頑張ろうという気持ちで、出社することができれば、自ずと企業価値が高まるのではないでしょうか。

健康管理は労働安全衛生法等の労働法令遵守の観点から、職場のマネジメントに取り組むことであり、健康づくりにおいては、安全配慮義務の観点から、職場の健康づくり風土醸成に率先的に取り組むことが求められます。

そして、何よりも大切なことは、「人的資源」から「人的資本」への転換という、健康経営の戦略視点から、部下ひとり一人が新たな企業価値創造の資本となるように、「働きやすさ」や「働きがい」を高めていくためのマネジメントに取り組むことが求められます。

特に、健康管理や健康づくりについては、一定の基本ルールがありますが、「働きやすさ」や「働きがい」についてのルールはありません。よって、管理監督者が価値創造のためのマネジメントを実践していくためには、前述のように経営者が自らの倫理観に基づく経営戦略を立て、各社の特性にあった取り組みを社内に周知することが必須となります。

【生きがい:ウェルビーイング】 イギリスの組織論学者、リンダ・グラットンが提唱した「ライフシフト」という考え方は、これまでのライフステージで区分した考え方とは異なり、人生100年時代での「マルチステージ」の生き方を、提唱しています。まさに、これは「人の生きがい」に焦点をあてた考え方です。これまでの、社会の中での自分という位置づけ、企業の中の自分という位置づけから、自分にとっての社会、自分にとっての企業、あるいは、自らが働く場を選択するというスタイルへと移行しつつあります。また、こうしたスタイルの変化は、デジタル化が大きな後押しとなっています。


健康経営は、「人資本の最大化」といったことが戦略目的になっていますが、これからの時代、人資本を最大化するには、人が仕事の場を選ぶ「ジョブ・チョイス」、あるいは「ワーク・チョイス」といった視点が重要になってきます。このように、これから先10年の企業の未来と成長を考える際には、人という資本が最大のポテンシャルを発揮できるための環境づくりに投資していくことが、企業経営にとって一層に重要な課題となっていきます。


NPO法人健康経営研究会の「未来を築く、健康経営―深化版:これからの健康経営の考え方について―」(令和3年7月)https://kenkokeiei.jp/documents/HealthManagementToBuildTheFurure.pdf




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